Diabetes Front
DITN No.507 掲載
『CKD診療ガイド2024』の解説
―糖尿病医療従事者にとっての改訂ポイントとは―
ゲスト

丸山 彰一先生
名古屋大学大学院医学系研究科病態内科学講座腎臓内科教授/CKD診療ガイドライン改訂委員会委員長
ホスト

川浪 大治先生
福岡大学医学部 内分泌・糖尿病内科学講座教授/同委員会サブリーダー
川浪●日本腎臓学会編『CKD診療ガイド2024』が2024年7月、12年ぶりに改訂されました。慢性腎臓病(CKD)に含まれる糖尿病関連腎臓病(DKD)は、わが国の透析導入の主たる原因疾患であり、2型糖尿病患者は高率でDKDを発症するといわれます。今回はCKD診療ガイドライン改訂委員会委員長の丸山彰一先生をお招きし、今回の改訂のポイントと、CKDおよびDKD治療について糖尿病医療関係者が知っておくべき点についてお話を伺います。
2型糖尿病患者のCKD治療における現状と課題
川浪●DKDの訳語は糖尿病性腎臓病とされていたのが、糖尿病関連腎臓病に変わりました。まず、この背景についてご解説をお願いします。
丸山●糖尿病患者にCKDがあれば糖尿病性腎臓病(diabetic kidney disease:DKD)としていました。それに含まれる糖尿病性腎症(diabetic nephropathy)は、糖尿病による特徴的な変化を来す腎臓病ということですが、これは厳密には腎生検をしないと分かりません。実際にはアルブミン尿が増加する典型的な糖尿病性腎症とは異なる病態の症例も増えてきています。また、糖尿病性腎症、糖尿病性腎臓病という名称からその区別が分かりづらく、より実態に即した形にしようということで、2023年10月からDKDの訳語を糖尿病性腎臓病から糖尿病関連腎臓病にすることとしました。DKDは糖尿病性腎症と、それとは異なりアルブミン尿の増加がないまま腎機能が低下する、糖尿病状態に関連する腎疾患の両方を含みます。
川浪●DKDは広くいえばCKDの中に含まれます。CKDの診断基準は蛋白尿あるいはアルブミン尿、そしてeGFRを組み合わせますが、現在の制度では、アルブミン尿が測定できるのは糖尿病症例に限られているのでしょうか。
丸山●保険診療では糖尿病の方に限り、3カ月に1度アルブミン尿の測定が可能です。また蛋白尿が明確に出ている方は除外されるなどの規制があります。
川浪●今回の『CKD診療ガイド2024』の変更点にCKD重症度分類がありますが、そのポイントを教えてください。
丸山●表にCKD重症度分類を示します。原疾患の糖尿病が糖尿病関連腎臓病となりました。G5の部分が以前は末期腎不全だけだったところに高度低下を追加しました。海外ですとG5になれば、だいたいすぐに透析となりますが、日本の場合はGFRが5~6(mL/分/1.73m2)のレベルまでは透析とならないことが多いので、高度低下を入れたのです。
川浪●『患者さんとご家族のためのCKD療養ガイド2024』も同時に刊行されました。
丸山●患者に説明するときの資料にしていただきたいです。特に、今回SGLT2阻害薬の記載を追記していますので、その説明にも活用いただけると思います。

腎臓専門医への紹介のタイミング
川浪●腎機能低下には早期介入が重要ですが、かかりつけ医の先生はどの程度まで自分で診ていくべきか悩むと思います。蛋白尿が出ていたら、もうそれだけで腎臓専門の先生へ紹介すべきかと躊躇われるケースもあるようです。
丸山●図1にCKD患者の、専門医との連携体制案を示します。まずはeGFRと尿検査でCKDの重症度を評価します。診断としては、eGFR 45(mL/分/1.73m2)未満は紹介、45~59(mL/分/1.73m2)と尿蛋白(−)で40歳以上だとすぐには紹介とはならず、かかりつけ医の先生のところで生活・食事指導を中心に様子をみていただくことになります。そういうケース、期間はかなりあるのではないかと思います。
川浪●そこで留意すべき点はありますか。
丸山●蛋白尿は定量していただき、尿蛋白0.5g/日以上の場合には腎臓専門医に紹介いただくことになります。eGFRが60(mL/分/1.73m2)未満で尿蛋白が±レベルの場合、血尿があればIgA腎症や腎炎が合併している可能性がありますので紹介してください。また図1を目安に、各地域に合わせて紹介基準を作成していただければと思います。

SGLT2阻害薬がDKDの第一選択薬に
川浪●『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』ではSGLT2阻害薬が取りあげられ、『CKD診療ガイド2024』でも掲載されています。『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018』では、SGLT2阻害薬は取りあげられていなかったのですが、2018年から2023年までの間にSGLT2阻害薬のエビデンスが蓄積してきた結果という認識でよろしいでしょうか。
丸山●その通りです。
川浪●DKDはRAS阻害薬が第一選択と考えられていましたが、どのような背景でSGLT2阻害薬がそれに加わったのでしょうか。
丸山●SGLT2阻害薬によるCKDへの効果が多くの試験結果、またそれらのメタ解析の結果により示されてきました1~4)。DKDにおいて、RAS阻害薬とSGLT2阻害薬は両方とも第一選択薬ということになりました(図2)。
川浪●RAS阻害薬の重要性は変わりなく、そこにSGLT2阻害薬が加わり両方の併用療法が推奨されると考えてよろしいでしょうか。
丸山●はい。また、蛋白尿がなく高血圧があるDKDは、RAS阻害薬に加えCa拮抗薬や利尿薬も第一選択となります。
川浪●SGLT2阻害薬は多くの試験で腎イベントだけではなく、心血管イベントの抑制も示しています1~4)。心腎代謝症候群といわれるようになり、CKD患者では心不全の頻度が高いことが分かっています。その視点からもSGLT2阻害薬を使っていくべきでしょうか。
丸山●はい、SGLT2阻害薬には多面的な効果があり、それを包括的に考えて第一選択となりました。
川浪●SGLT2阻害薬、RAS阻害薬を用いても、アルブミン尿が持続する場合には、図2によると非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)を使うことになっておりますが、MRAについてポイントを教えてください。
丸山●元々ステロイド型のMRAは蛋白尿抑制効果が報告されていましたが、今回副作用の少ない非ステロイド型のMRAが腎機能、腎予後の改善に効果があるというエビデンスが出てきましたので本ガイドに反映しています5~7)。今後さらなるエビデンスの集積が期待されています。
川浪●RAS阻害薬、SGLT2阻害薬、そしてそれでもアルブミン尿が続けば非ステロイド型MRAを使った多剤併用療法をしていくわけですね。治療効果についてはどのように判定していけばよろしいでしょうか。
丸山●蛋白尿が出ている方なら、蛋白尿が指標になります。RAS阻害薬、SGLT2阻害薬、MRAは蛋白尿抑制効果があるので、それを患者に示すことができれば治療に対してやる気になってもらえるでしょう。他方で蛋白尿がない方ですと、治療効果を実感できないのが課題です。eGFRが低下しなければいいということをきちんと説明する必要があります。
川浪●eGFRスロープも重要ですね。
丸山●eGFRスロープはeGFRの年間変化率であり、腎機能の低下速度を示し、腎予後の予測に有用な因子です。SGLT2阻害薬投与初期にはeGFR initial dropと呼ばれるeGFRの一時的な低下が生じることがあります。患者が余計な心配をしないように、事前に説明しておくことが大切です。
川浪●eGFR initial dropはどの程度までなら様子をみてよいでしょうか。
丸山●スタディの結果がいくつか出ておりまして、eGFRが30%までの低下の場合は予後がいい、30%以上低下すると予後が悪いということが示されておりますので8)、30%以上低下する場合は腎臓に何らかの障害がある可能性があると思います。

GLP-1受容体作動薬が新規掲載に
川浪●DKDにおいては血糖マネジメント、かつ腎保護効果の視点からGLP-1受容体作動薬も注目されています。
丸山●GLP-1受容体作動薬については、2024年にFLOW試験によってセマグルチド皮下注の腎イベントリスク抑制効果が示されました9)。『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』の作成時点では、まだその結果は出ていなかったのですが、『CKD診療ガイド2024』ではそれを受けてGLP-1受容体作動薬の有用性が掲載されています。
川浪●GLP-1受容体作動薬はアルブミン尿を抑えると考えてよろしいでしょうか。
丸山●アルブミン尿の抑制効果が示されていまして、腎保護作用につながることが期待できます。今後、さらなるエビデンスの集積が待たれるところです。
DKDのFour Pillars(4本柱)
川浪●現在、海外の総説などでは心不全のFantastic FourのようなDKDのFour Pillarsとして、RAS阻害薬、SGLT2阻害薬、非ステロイド型MRA、GLP-1受容体作動薬が治療の4本柱となっています。この4剤の組み合わせ方、治療強化のタイミングなどのアドバイスをいただきたいと思います。
丸山●エビデンスの強さではSGLT2阻害薬、RAS阻害薬の2剤をまず考えていただきたいです。RAS阻害薬は高血圧や蛋白尿がある場合には優先されるということで、非ステロイド型MRA、GLP-1受容体作動薬は少し様子を見てからだと思います。
川浪●分かりました。RAS阻害薬とSGLT2阻害薬の次に非ステロイド型MRAかGLP-1受容体作動薬のどちらにいくのかについては、どう考えればよろしいでしょうか。
丸山●決まった順位はないのですが、個人的には今後、MRAがもう少しエビデンスが出てきて優先度が上がるかもしれないと期待はしています。一方で肥満がある方、血糖コントロールが悪い方などはGLP-1受容体作動薬がいいでしょう。ここは症例によってさまざまかと思います。
川浪●RAS阻害薬とSGLT2阻害薬を併用していて、例えば3カ月や半年とか、どのくらいアルブミン尿が下がらない場合に次の追加を考えればよろしいでしょうか。
丸山●個人的な意見ですが、例えば3~6カ月間、様子をみて副作用なども確認して、効果が安定してから考えればいいのではないかと思います。
新薬への期待と今後の展望
川浪●今回の改訂のポイントはSGLT2阻害薬が第一選択薬になった点だと思いますが、CKDの中では特にどのような症例にSGLT2阻害薬が効果を発揮するでしょうか。
丸山●SGLT2阻害薬は蛋白尿がある方については効果が明確となっております。蛋白尿がない方については、試験期間内では明確な効果は認められていませんが、長期間では違う結果になることが期待できるサブ解析の結果が出ています。ただし糖尿病症例については蛋白尿のない方にも有効性が示唆されるデータがありますので、糖尿病があればSGLT2阻害薬の投与を検討すべきと思います。
川浪●先ほど非ステロイド型MRAについて今後のエビデンス集積が待たれるとのお話がありました。フィネレノンの適用は「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く)」ですので、糖尿病のないCKDには使えないでしょうか。
丸山●はい。現在、非ステロイド型MRAであるフィネレノンのCKDに対する試験が進行中ですので、今後は使えるようになることが期待できます。
川浪●フィネレノンは、心不全に対してもエビデンスが出てきております。
丸山●フィネレノンは心不全に対して、2025年3月28日発刊の『2025年改訂版 心不全診療ガイドライン』で推奨に追加されました。
川浪●GLP-1受容体作動薬の明らかにされるべき課題は、非肥満のDKDの症例にも効果があるのかどうかでしょうか。
丸山●そうです、エビデンスが待たれます。
川浪●今後の新薬への期待についてはいかがですか。
丸山●IgA腎症をはじめとした腎炎治療においては、10種類以上の薬剤の試験が世界中で進行しており、今後、腎炎治療が急速に変わる可能性があります。そうなると、今よりも個々の病態をより詳細に検討しつつ治療をしていくことが求められるようになると考えています。
川浪●鑑別診断が非常に重要になってくるということですね。全国調査によると尿アルブミン定量検査の実施率は2割に達していないとの状況もあります10)。
丸山●われわれはその重要性についての啓発活動をしていく必要があると思っています。保険診療でアルブミン尿を測れるのは糖尿病例だけなど条件がいくつかあるので、その場合は蛋白尿をしっかり測っていただきたい。治療の選択と評価において、非常に重要になりますので、そこはぜひお願いしたいと思います。
川浪●本日は今後ますます重要となってくると思われるCKD、DKDについて貴重なお話を伺いました。ありがとうございました。
参考文献
1)Zinman B, et al. N Engl J Med 373(22): 2117-2128, 2015.
2)Perkovic V, et al. N Engl J Med 380(24): 2295-2306, 2019.
3)Heerspink HJL, et al. N Engl J Med 383(15): 1436-1446, 2020.
4)The EMPA-KIDNEY Collaborative Group. N Engl J Med 388(2): 117-127, 2023.
5)Bakris GL, et al. N Engl J Med 383(23): 2219-2229, 2020.
6)Pitt B, et al. N Engl J Med 385(24): 2252-2263, 2021.
7)Agarwal R, et al. Eur Heart J 43(6): 474-484, 2022.
8)Chen CY, et al. Mayo Clin Proc 100(2): 204-219, 2025.
9)Perkovic V, et al. N Engl J Med 391(2): 109-121, 2024.
10)Sugiyama T, et al. Diabetes Res Clin Pract 155: 107750, 2019.
